カオスの権化
「九龍城探訪 魔窟で暮らす人々」を読んだ。
中国の香港にあった九龍城砦についての本で、知る人ぞ知る存在だと思う。
九龍城砦についての説明はできた経緯が難しくて説明できないけど、中国にありながらどこの国の法律も適用されない無法地帯だった場所。まあスラム街だね。
画像検索するといろんな画像が出てくるんだけど、巨大集合住宅のような見た目でまさしくアングラでカオスな感じがそそられるよね・・・
こういう本。
大型本でぶ厚めの写真集的な見た目。メインは九龍城砦に住んでいた住民等のインタビュー記事を集めたもの。
読んでて意外だと思ったのが、九龍城砦の住民は当時の香港に住んでいた人達とあまり変わらない生活を送っていたということ。
1つの塊みたいな建築群は一つの街としてちゃんと機能していたらしい。
法律も決まり事も何もない中で、住民達が自主的に自警団を作って治安を守ったり、住民同士が自然と協力しあっていた。
城砦内は生活するためのものは一通り揃っていて、コンビニみたいな所もあったり、歯医者等もたくさんあったそう。
電気や水はどうしても足りなくて、外から無理やり違法に盗用してたらしい。そのへんが中国人らしいたくましさを感じる笑
他にも城砦内では税金がかからないことから、工場が多くあって、布や金属等を加工する工場や、製麺所等の食品系の工場が多かったらしい。
中でも香港ではメジャーな食べ物の魚肉団子は80%が九龍城砦で作られていた時期もあったらしい。
そんな意外とまともだった九龍城砦は人が住み始めてしばらく経った50、60年代は治安は最悪で、売春、麻薬、犯罪なんでもあったらしい。
飼っていた犬やサルもヤク中になってたっていう話は面白かった笑
70年代からは工業地帯として発展していって、本の表紙のような高層建築になっていったそう。
本を読み進めて、色んな人のインタビュー記事を読んでて共通していたのは、みんな自分の住み慣れた場所で平和に暮らしていたいということ。
こんな異質な環境にあっても、普通に人は住んでいて、普通の生活があった。
そんな人の多様性や適応性の豊かさに心惹かれる。
カオスの権化だった九龍城砦も90年代には取り壊されて今はただの公園になっているらしい。
今はもう無くなってしまったからこその九龍城砦、ロマンを感じずにはいられない・・・
ここに住んでいた人たちはその後どうなったんだろう・・・
ロマンたっぷりの九龍城砦について色んなことを知り、感じれた本だった。面白かったなぁ。